サラリーマンと大福
四月某日
いつもよりも遅めの帰路につくと、帰宅する人の波とぶつかった。
満員電車……という程でもなかったが、それなりに人がいたので人の間を縫うように進み、ある仕事帰りのサラリーマンの前に陣取る。
あぁ、重い。手違いで重い荷物を持ってきてしまったことを後悔する。履いているスカートが静電気で脚に纏わりつく。静電気止めスプレーしたのになぁ。一日中続く訳ではないんだなぁ……。
ふと、前で本を読んでいるサラリーマンの膝に紫の大福の袋が乗っていることに気付く。
うぅ。食べたい。
暫くして電車を降り、改札へ向かう。あの大福はどうなっただろうか。潰れてはいないだろうか。腹ペコだった私の頭の中は大福で埋め尽くされていた。
と、あるサラリーマンが私を追い越していった。よく見ると手には紫色の袋を下げている。なんと、この大福は私と同じ駅で降りたのか。そんな運命の再会を他所に、サラリーマンは大福を連れて足早に去っていく。
紫色が遠ざかる。
あぁ、大福よ。