「告白」を掘り出す
五月某日
突然、思い立って部屋の掃除を始める。
私の部屋には元からあまりモノはない。今流行りのミニマリストがどうとかそういった類ではなく、ただ熱し易く冷めやすい性格なのだ。そのおかげで小さな頃は、漫画を全巻揃えた後すぐに売ることもしばしばで、周りから見るときっと理解し難い子どもだったことだろう。因みにこれは今でも直っていない。
どこから手をつけようか、と暫し悩む。えーと、まずは……。とりあえず部屋の角に高く積まれた本の選別を行うことにする。本を読む癖に本棚を持っていないため、もう読まないものやしっくり来なかった本を定期的に選別しなければならないのである。そしてめでたく残された本は、痛まないように注意を払われながら部屋の角に積まれることとなる。
選別を行っている最中、とある本を見つけた。
湊かなえの「告白」である。
そういえば映画化されたときに、この本を買って読んだなぁという程度だったけれど、少し思い返すと物語の内容がどんどん蘇ってきた。
この本の登場人物の中で、私は少年Aが好きであった。
この物語の中で少年Aは、担任である森口先生との対決場面が主として描かれている。勿論それ以外のシーンもあるのだが、そうした場面ごとを切り取るのではない。私は少年Aが初めから最後まで一貫として頭の良いところが好きなのだ。
この本を読んで分かったことは、頭が良いことは何よりも有利であり、武器になるということだ。少年Aは簡単に全ての人が信じてしまうような嘘を吐く。けれど、彼はボロを出さない。最後の最後まで彼の嘘は見破られないのだ。彼は、嘘をつく場面とつかない場面の見分けが非常に上手なのである。
そんなことを考えていると、もう一度読み直したい衝動に駆られる。掃除が終わったら、掃除が終わったら読むぞぅ。…………ううーん、一ページだけ。ちょっと最初を読むだけ。おおっ、そうだこんなエピソードもあったなぁ。おっとこれは、…………。
まだまだ掃除は終わりそうにない。
- 作者: 湊かなえ
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2010/04/08
- メディア: 文庫
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